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大前研一氏の特別講演

日本への帰省の際、Information On Demand Conference Japan 2010 に参加してきました。こういう機会は日本で働いていたときでもあまりなかったので、なかなか新鮮でした。

二日間に渡っていくつものセッションがありましたが、初日には大前研一氏による特別講演「緊急提言!新しい 10 年へ向かって、今、日本は何をなすべきか」がありました。

スライドなど一切ない講演でしたが、さすがに大前氏の話す内容は明快で、メモもとても取りやすかったので、記録として残しやすい印象がありました。

ここでは大前氏の特別講演の内容を私がまとめたものを公開します。以下の内容は、その場で取ったメモを元に私がまとめたものです。正確性に欠けると思いますが、ご了承ください。

四つの図は私が手書きしたメモをスキャナで取り込んだものです。

変わってきたお金の流れ

[図] 手書きメモその 3

「以前から『緊急提言』と何度も緊急な提言を行なってきましたが、一向に政府はやってくれません」というつかみから入る大前氏。

ここ数年で「お金の流れが変わってきた」と大前氏は言います。

300 年から 200 年前は、先進国が南の途上国を軍事で植民地化していくという、軍事力による流動でした。

50 年ほど前になると、先進国が途上国に ODA という形を使って政府レベルで資金を流動させていました。

これがここ数年で変化しています。先進国にはお金が余るようになってきました。その額は 8000 兆円に上り、これらを先進国で回して利益を得ようとしてもほとんどリターンがない状態になっています。その半数の 4000 兆円はホームレスマネーになっています。

これらの余ったお金は、先進国の株式市場を通して、中国・インド・インドネシア・トルコといった国々に流動するようになってきました。先進国もそうでしたが、まず為替が上がって、その後、株式が上がります。こうした国でもこの傾向が見えています。

先進国のお金を持った個人から途上国にある民間企業というお金が流れが人類史上初めてできています。

鍵を握る国

[図] 手書きメモその 4

大前氏が「企業参謀」(1985) を書いた頃

  • Company
  • Competition
  • Customer

という「3C」が企業のキーポイントでした。

それが「ボーダレス・ワールド」(1990) では

  • Investment
  • Information
  • Industry

という「3I」に加えて

  • Capital
  • Communication
  • Currency

の「3C」がキーポイントになっています。アメリカ GE / IBM という巨人が information だけで 5 万人雇用するという話があったりしましたが、実際インドのとあるシステム会社では SE だけで 5 万人から 7 万人いたりします。そういう時代になっています。

先の話でも出た、ブラジル・ロシア・インド・中国……これらは BRICS とよばれて非常に勢いがあります。

インドネシアもかなり勢いがあって、インドネシアでは BRICS にもう一つ「I」を加えて「BRIICS」と言ってくれと息巻いていたりします。

こうした勢いのある国は共通点があって

  • 人口が 5000 万人以上であること
  • 平均年齢が 25 〜 30 歳と「若い」国であること
  • ひとりあたり GDP が US$3,000 以上であること

インドネシアは人口 2 億 4000 万人で、平均年齢が 27 歳です。インドネシア以外にもトルコ・タイ・ベトナムといった国が該当します。

基本的には年収 US$2,500 〜 3,500 あたりの人たちが最も多く消費します。あまり世界的な景気に左右されないのが特徴で、いわゆる「消費する人々」です。

EU やアメリカと比べて日本にとって大きな優位点は、これら「消費する人々」がアジアという近隣だけでも 7 億 4000 万人、つまり日本が 7 つ分あるような規模でいるわけです。

これからの十年、こうした国々が日本が生き残っていくためのキーになっていくでしょう。

十年後の経済ランキング

[図] 手書きメモその 1

今後十年ということで、十年後の 2020 年の世界の経済ランキングを予想しています。

実は今でも世界一位の経済大国は、アメリカではなく「EU」であると明言します。「EU」は 28 カ国からなる地域統合体ですが、経済的にも法律的にも「国」と言えるだけの条件を備えているとのこと。

世界一位の地位は十年後も EU であり、それに続くのがアメリカだろうと予想しています。この順位は 2010 年も 2020 年も変わらないということです。

2010 年の時点では、それに日本が続いていますが、十年後には中国が三位に、インドが四位と続きます。中国は二十年ほど前は、九州と同程度の GDP しかありませんでしたが、今では日本と横並び、今年中にも日本を抜くと予想されています。インドは遅くとも 2025 年には為替で抜いているでしょう。

五位・六位には、インドネシア・ブラジルが入り、日本は七位になるであろうと予想しています。

日本が生き残っていくために……

[図] 手書きメモその 2

こうした今後十年の動きの中で、日本はどのように立ち振舞っていくべきか。最大のネックとなるのは「人材」であろうと大前氏は指摘します。

輸入して調達することのできる「モノ」ではなく、現地の内需に応えることができる人材の有無が勝負になります。

日本経済 7 つ分もある市場の内需に応えることができれば、今までと同じ「いい商品をより安く!」という形のビジネスでいけるわけです。

日本が得意とするのはインフラ作りで、品質などでは他国を圧倒しています。ところが、個々の連携がバラバラで柔軟性にも欠けています。日本はトータルなサービスとしてこれらを提供するのが苦手です。新幹線もそれで負けています。

新幹線のダイヤは他国では真似できないほど、高度な運用ノウハウ BOT (Build-Operate-Transfer) もあります。ただし、トータルでパッケージする指導者・会社がないとダメです。トータルで勝つことが必要になってきます。

国民 DB とクラウドコンピューティングで全国規模のインフラを構築し、住民サービスをブラウザから行えるようなシステムを作り上げれば、システム会社はまだまだいけます。

日本 7 つ分の市場を求め、アジアに出る勇気が必要です。人材づくりには二十年かかります。今すぐ取り掛かる必要があります。

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